2024年の訪日ベトナム人観光客数は62.1万人に達し、消費額は1,364億円を記録しています。特筆すべきは、チャーター便を利用した地方空港への直接入国が増加していることです。本記事では、地域限定旅行業者向けに、効果的な多言語対応とチャーター便活用による誘客戦略について解説します。
インバウンド市場の現状と課題
JNTOの最新データによると、2024年のベトナム人観光客による消費額は前年比12.5%増を記録し、一人当たり平均支出額は21.9万円となっています。特に注目すべきは、観光目的の訪日が全体の35.1%を占め、今後さらなる増加が期待されている点です。
現状の主な課題は、言語対応の不足です。ベトナムのEF英語能力指数(EPI)は498点で116カ国中63位と「低い能力」に分類されており、英語での情報提供だけでは十分な対応とは言えません。特に地方部での多言語対応の遅れが、観光客の地方誘致を妨げる要因となっています。
さらに、地方空港へのアクセスも課題となっています。ベトナムからの直行便は主要都市に集中しており、地方への観光客誘致には、チャーター便の活用が重要な鍵となっています。
ベトナム人観光客の特徴と潜在ニーズ
ベトナム人観光客の最大の特徴は、SNSを活用した情報収集です。調査によると、旅行情報の取得源として73.1%がSNSを利用し、51.7%が知人からの情報を参考にしています。特にフェイスブックとザロ(Zalo)の利用率が高く、これらのプラットフォームでの情報発信が効果的です。
また、スマートフォンの利用率が高いことも特徴です。調査では利用時間の65%がSNSアプリの利用に費やされており、モバイル対応のウェブサイト制作が不可欠となっています。特に、写真映えするスポットやグルメ情報への関心が高く、インスタグラム等での視覚的な情報発信が重要です。
さらに、団体旅行から個人旅行へのシフトが進んでいます。2024年の調査では、52%が個人旅行を選択しており、特に若年層を中心に個人旅行の需要が高まっています。
ベトナム人の英語利用と堪能度
ベトナム人の英語能力は、年齢層や地域によって大きな差があります。2024年のEF英語能力指数では498点と前年から低下し、特に地方部での英語対応には課題が残ります。
都市部の若年層、特に20-30代のビジネスパーソンは比較的英語でのコミュニケーションが可能です。しかし、40代以上や地方居住者の英語能力は限定的であり、ベトナム語での情報提供が望ましいと言えます。
観光分野においては、基本的な英語は理解できても、詳細な情報の理解や予約手続きには困難を感じる層が多いことが報告されています。このため、重要な情報については必ずベトナム語での提供が推奨されます。
チャーター便の利用状況と主な観光先
【茨城空港】 ベトナム・ハノイから茨城空港へのチャーター便が運航され、特に茨城県北部の観光スポットや筑波山観光に人気があります。主にハノイの旅行会社が企画する4-5日間の団体ツアーで利用されています。
【松山空港】 ホーチミンからのチャーター便で、道後温泉や瀬戸内海の島々を巡る観光が人気です。若年層を中心としたインスタ映えスポット巡りと組み合わせた商品が好評を得ています。
【鹿児島空港】 ハノイ発のチャーター便で、桜島観光と温泉を組み合わせたツアーが主流です。春季の桜や秋季の紅葉シーズンを中心に運航されています。
【新潟空港】 ホーチミン発着のチャーター便で、スキーや雪見温泉を目的とした冬季観光が中心です。特に、ベトナムでは体験できない雪景色に人気が集中しています。
【岡山空港】 ハノイからのチャーター便で、後楽園や倉敷美観地区などの文化観光が人気です。特に、日本の伝統文化体験を組み込んだツアーが好評を得ています。
ウェブサイトの多言語対応による集客戦略
効果的な多言語ウェブサイト制作には、ベトナム語と英語の両方での対応が重要です。特に予約システムやキャンセルポリシーなどの重要情報は、必ずベトナム語での提供が必要です。
また、SNS連携も重要な要素です。フェイスブックやザロとの連携機能を実装し、情報共有を容易にすることで、口コミによる拡散効果が期待できます。写真や動画コンテンツを充実させ、視覚的な訴求を強化することも効果的です。
予約システムについては、モバイル決済への対応も重要です。ベトナムではMoMoなどの電子決済が普及しており、これらの決済手段への対応を検討することで、利便性を高めることができます。
多言語化とチャーター便誘致の段階的実践ガイド
多言語対応とチャーター便誘致は、段階的に進めることが推奨されます。まず、基本的な施設情報や予約システムのベトナム語対応から着手し、段階的にコンテンツを拡充していきます。この際、単なる機械翻訳ではなく、ベトナム人の旅行習慣や文化的背景を考慮した情報提供が重要です。
次に、チャーター便運航に向けた体制構築を進めます。安定的なチャーター運航を実施するためには、インバウンドの集客を行うベトナムの旅行会社および日本発の便を埋めるための日本の旅行会社双方の利害を一致させるバックトゥバックのチャーターを含めた協業作業が必要です。その様なオペレーションを円滑に行うためには、チャーター契約を専門にするオペレーターと取り組むのが良いでしょう。
さらに、地域の観光協会やDMOとの連携強化も不可欠です。チャーター便誘致には自治体との協力が必要であり、特に地方空港の活用においては、官民一体となった取り組みが求められます。地域の観光資源を効果的に活用し、ベトナム人観光客のニーズに合わせた観光商品の開発を進めることで、持続可能な観光誘客が実現できます。
これらの取り組みを通じて、効果的なベトナム人観光客の誘致が可能となります。長期的な視点での戦略立案と、関係者間の緊密な連携が成功の鍵となります。詳細なご相談は、お気軽にお問い合わせください。
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